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対テロ戦争の裏側

Bush0001 フランスの公共テレビ局、FRANCE3が「断片からの確信」(2001年10月放映)という番組のなかで明らかにしたところによると、2001年7月(アメリカ同時多発テロの50日くらい前)に、ある秘密裏の会合がドイツのベルリンで数度開催されていたらしい。その会合に参加していたのは米国、ロシア、パキスタン、ドイツの高官で、アフガニスタン内戦を終わらせ、タリバン政権の国際的孤立に終止符を打つ和解案を練っていたという。

米国はそこで、アフガニスタン国内に巨大なパイプラインを敷設するかわりに、何十億ドルもの土地使用料を支払うという提案を行っていたが、タリバン側は結局最後までその会合に参加することを拒否し続けた。

米国は、クリントン政権時代から石油資本(メジャー)が中央アジア諸国に埋蔵される莫大な量の石油や天然ガスを掘削、搬出し、アジア諸国などに売りさばくと言う戦略をもっていた。ただ、それらの石油、天然ガスをイラン国内にパイプラインを敷設してアラビア海、インド洋に搬出するには軍事、政治的にリスクが大きすぎることを懸念していた。政情不安となれば、いつ何時、苦労して得た権益が相手国側に行かないとも言えない。したがって、米国はパイプラインを親米国であるパキスタン経由で搬出することを計画していた。

中央アジアに埋蔵される膨大なエネルギー資源は、米石油資本にとって何としても手に入れたいものだった。

Afgan_map 1995年、トルクメニスタンなどカスピ海諸国からアフガニスタンを経由しアラビア海に天然ガスを搬出する大規模なパイプライン計画が米石油資本大手のユノカル社によって計画され、関係当事者との交渉が始められた。交渉窓口のユノカル社最高顧問は、ハミド・カルザイ氏(現アフガニスタン大統領!)だった。米国の中央アジアのエネルギー資源獲得の野望は、しかし目前で振り出しに戻ってしまう。アフリカ北部諸国における米大使館連続爆破事件の首謀者とされたビンラディン容疑者の引渡しを求めて、米軍がアフガニスタン内のテロリスト訓練キャンプに巡航ミサイル「トマホーク」を撃ち込んだため、アフガニスタン側交渉窓口だったタリバンが態度を硬化させたのだった。

米国の中央アジアのエネルギー資源獲得計画が頓挫する一方で、トルクメニスタンの天然ガスは、1997年にイランへのパイプラインが完成し、輸出が始まっている。また、2000年から、ロシア向けに大規模な輸出が始まっている。更に、中国へのパイプライン敷設計画や、トルコに向けたカスピ海海底パイプライン計画もあって、このまま行けば、トルクメニスタンの天然ガスは、ロシア、イラン、そして中国に抑えられてしまう。しかも、トルクメニスタンに限らず、中央アジアには、手つかずの膨大な石油と天然ガスが埋蔵されている。早急にアフガニスタン・パキスタンルートのパイプラインを完成させなければ、米国はこの膨大な宝の山を失うことになる。

ブッシュ政権の副大統領のリチャード・B・チェイニーは、10万人の社員を擁する石油関連企業、ハリバートン社のCEOを歴任しており、ライス安全保障担当大統領補佐官も石油関連産業に関与していた。彼らの属していた石油関連会社は東南アジアの油田開発も積極的に行っており、中央アジアに眠るエネルギー資源を垂涎の思いで見ていたことだろう。

ベルリンでの秘密会合で米国のアフガニスタン石油パイプライン交渉が決裂した直後、偶然にも(?)2001年9月11日にアメリカ同時多発テロが起こると、米国は間髪入れずにアフガニスタンに侵攻してタリバン政権を倒し、大統領選挙でカルザイ氏を新大統領に押したてた。そして、一気にアフガニスタンの治安を回復するれば、米国石油資本と親密なカルザイ大統領によってパイプラインをパキスタン経由で完成させることができて、90年代後半の失敗は取り戻せる、というのが米国のシナリオだったのだろう。

しかし、実際には周辺諸国からイスラム義勇軍が続々とアフガニスタンに集まり、紛争は泥沼化してしまった。民衆も米国を中心とする多国籍軍を必ずしも支持せず、タリバン勢力は国土の半分を制圧するほど回復してきている。

小泉政権も、米国のシナリオを信じて、短期間で「不朽の自由作戦」は終了すると考えていたのであろう。しかし、「不朽の自由作戦」に協力するための「テロ特措法」はすでに3回の延長を繰り返し、4回目の延長が求められている。「テロ撲滅」が目的なのか、「中央アジアの石油利権」が目的なのか、いずれにしても米国のシナリオが破綻している以上、日本の「テロ特措法」を支える前政権の政治判断も破綻したと考えるべきだろう。

余談だが、ロシアのプーチン大統領は、カザフスタンなど中央アジア諸国とカスピ海諸国を結ぶパイプライン敷設の障害となっていたチェチェンを対テロとして攻めたて、中央アジアを傘下に収めた。彼もまた、「チェチェンのテロリストとの戦い」を唱えながら、まんまと中央アジアのエネルギー資源を手にし、ロシアを超大国に復活させる野望を推し進めている。

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ジェトロ - パキスタン
中国から中東・アフリカへの中継点グワダル港-押し寄せるチャイナパワー(1)- (パキスタン) 2007年8月15日
http://www.jetro.go.jp/biz/world/asia/pk/topics/48380
中国が総工費の80%を負担した「グワダル港」の開港が間近に迫っている。中国南西部からグワダルまでのインフラが整えば、中東・アフリカとの中継点となる可能性を秘めている。

田中宇の国際ニュース解説:アメリカを出し抜く中国外交
http://tanakanews.com/b0612uschina.htm

アフガニスタン縦断パイプライン・ルート
http://ihcc-movie.sytes.net/newasian-afganistan-newpipeline-route01-india-lng01.html

グワダル
http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Lake/2917/middleeast/gwadar.html

巧みな龍の戦略を凝視して:イザ!
http://shoko011.iza.ne.jp/blog/entry/229904/

国際連合安全保障理事会決議第1333号:アフガニスタンの情勢に関する決議 (2000/12/19)
中国は棄権

投稿: ゴンベイ | 2007年9月 6日 (木) 12時08分

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