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自民党派閥政治の終焉

03 安倍首相の突然の辞任で急遽党総裁選挙を実施することとなった自民党では、町村派(森派)の福田康夫氏に支持が集まっている。(9月16日現在)
自民党の中では穏健左派と目される福田氏への雪崩式の支持拡大は、自民党の政権維持の原動力である「振り子の原理」が働いた、と見られている。

「振り子の原理」とは、自民党内で政権が振り子のように振れ、あたかも政権交代が起こったような新たな期待感を国民に与えながらも、自民党そのものは政権与党として権力を維持していくという「生存装置」だ。過去には、強権姿勢の岸内閣から「寛容と忍耐」の池田内閣へ、金権政治の田中内閣からクリーンな三木内閣へ、などの総裁交代劇で、自民党が政権を手放すことなく世論の批判、反感をかわしてきた。今回はタカ派的右派の小泉-安倍から、ハト派的左派の福田への振り子の振り戻しとなる。

自民党がこのような生き残りの術を身につけたのは、この政党の生い立ちからの宿命であった。
55年体制とは当時の米ソ冷戦構造を反映し、「日本をアメリカ陣営」に組み込むために、日本民主党(鳩山一郎)と自由党(吉田茂)が保守合同をしたことによって成立した。その内情は、吉田派・反吉田派、党人派・官僚派、戦前派・戦後派など複雑な人間関係および思想対立を飲み込んだ集合体であり、別の言い方をするなら、財界とアメリカの資金と支援で結成された、寄り合い所帯、すなわち、自民党そのものが連立政権だった。

その寄り合い所帯の自民党が長期単独政権を維持できた大きな要因は、自民党がつくり上げた「派閥」というシステムの効用が大きい。これにより、意見の異なる者が敵対しても、党が分裂するようなことにはならず、派閥単位での党内でのぶつかり合いになり、これが党の活力となった。派閥とは、志を同じくするものが集まる政策研究グループであり、他の派閥と角逐して自分たちの領袖を党総裁につけるための勢力集団であり、小さな擬似政党だった。

中選挙区制度の下では、選挙に巨額の資金が必要であったため、派閥の領袖はカネ集めの才に優れていることが求められ、派閥構成議員にカネを配ることでさらに派閥の勢力を拡大する。カネ集めのためには、様々な利権と結びつき、利益誘導政策を行い、それが地方や斜陽産業にも流れることで、日本中に平等に富の配分が行われた(これを本当の意味での「バラマキ」という)。利益誘導政策を実行するには政権与党の座にあることが必要であり、したがって各派閥はどんなに深刻な抗争があっても「自民党」という利益共同体を壊すことはなかった。

各利益集団から集金→選挙で政権与党獲得→各利益集団に利益誘導→(繰り返し)・・・

この自民党システムが有効に機能するには、基本的に経済が右肩上がりで、税収もそれに比例して年々増加することが前提となる。80年代以降の赤字財政やゼロシーリングといった、「パイが減っていく」、すなわち縮小均衡路線の中で、自民党は自らの生存のための足場を失っていく。これが、90年代以降、自民党が単独で政権を担えなくなった最も大きな理由だ。

「自民党をぶっ壊す!」と登場した小泉政権は、決定的に自民党システムを破壊した。  Jimin01
官邸機能の強化によって、首相の権力が強まった(政策提案権、内閣官房強化、経済財政諮問会議、政党助成金の分配権など)。また、中選挙区制から小選挙区制になったことで、首相が「選挙の顔」として重要な役割を担うようになった。そして、小泉首相は「劇場型」と言われるパフォーマンス政治で国民世論を味方に付けて、派閥の力学を封じた。人事でも、徹底的に平成研究会(旧田中派)潰しを行い、中曽根、宮沢といった長老へ引退を勧告し、派閥は官邸に対する影響力を大きく削がれた。
経済政策では、株式市場や外為市場を通じて税金が海外(主に米国)に流れる仕組みが導入され、地方の第一次産業(農業)や多くの第二次産業(中小企業)が瀕死の淵へ追い込まれ、自民党派閥の支持基盤は崩壊した。

02 小泉政権以降の自民党の派閥は、悲しいかな自民党という存在を維持することが最大の目的となっている。
小泉後継の総裁選で安倍指示へ雪崩現象が起こったのは、国民的人気の高い安倍氏で選挙を戦うことが有利だという判断に過ぎない。(各派閥では、「バスに乗り遅れるな」という声が飛び交った。)
そして、首相の権力が派閥の力を大きく上回った結果、安倍政権では首相個人の思い入れに過ぎない「憲法改正」、「教育改革」、「戦後レジュームの脱却」などが暴走し、各派閥はそれを追認することしかできなかった。
代議制民主主義である以上、政党は有権者の意見を国政に反映するように行動しなければならない。しかし、今の自民党では有権者の意見よりも自らの生き残りのための行動が優先される状態である。安倍辞任を受けての2日間の自民党の動きは、またしても党の存続のためのうわべだけの結束により、福田支持への雪崩現象が起こった。

いよいよ自民党という派閥政治の幕が下り始めている。

【参考】
「世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略VOL164」 江田島孔明

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