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大国の利権③~環境WARS~

01 国連の「気候変動に関する国連ハイレベル会合」が、9月24日にニューヨークで開催された。世界150カ国の首脳や代表が参加した会合で、国連を挙げて気候変動問題に取り組むことが確認された。しかしこの問題で主導権を握りたい米国、発展途上国の代表として経済成長を維持しつつ温室効果ガスの排出規制を緩和したい中国など、参加国の立場はさまざまだ。

米国のブッシュ大統領は6年前の就任直後には、先進国に温室効果ガス排出量の削減を義務づけた京都議定書を「米国経済に害をなす」と切り捨て、「アンチ環境政策」(米ビジネスウィーク誌)の推進者と酷評された。
ところが、そのブッシュ米大統領は、オーストラリア・シドニーで今年9月7日に開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)ビジネスサミットでの演説で、「米国は気候変動を真剣にとらえている」と強調し、立場を転換した。

ブッシュ大統領は、今年の一般教書演説で、ガソリン消費を10年以内に20%削減させる目標を掲げ、輸入石油への依存体質から脱却すると同時に温室効果ガスの排出削減を目指す考えを示した。世界最大の石油消費国でその6割を輸入に頼る米国の現状について、大統領は「敵対国家やテロリストから見て、われわれの弱点になる」と警告した。
これは、イラクやアフガニスタンの民主化の目処が立たない中で、石油の高騰により中国やロシア、ベネズエラなどの原油産出国が資源を武器として反米政策を推進していることも強く影響している。

そんなブッシュ大統領の切り札が「バイオエタノール」だ。穀物からつくられる再生可能な燃料をガソリンに混入して、2017年までにエタノールの国内生産量を350億ガロンと現在の5倍以上に膨らませ、これでガソリン消費の15%を減らし、残りは乗用車の燃費向上でまかなう算段だ。

バイオエタノール燃料はサトウキビやトウモロコシといった「穀物」を原料とする。穀物からつくられる燃料の最大のメリットは、「無尽蔵である」ということである。また価格も安く、ガソリンの半分ほどの値段ですむ。
原油の主軸である中東への依存度を減らし、米国の埋蔵する原油を温存できる。原油価格は値上げに歯止めをかけられるのと、穀物の相場上昇で生産農家への補助金を削減できる。

01_2 バイオエタノールの原料となる穀物を栽培するには、広大な土地を持ち、農業が盛んな国ほど有利である。米国はその広大な農地をバイオエタノール用作物に利用し、年間生産されているトウモロコシの15%がエタノールになっているという。将来、いや、すでに現在の需要増加によって、バイオエタノールの生産は各国で大変盛んになっている。その原料を輸出すれば、莫大な利益が得られる可能性がある。「環境保護」と声高に主張しつつ、その裏では別の動機が働いているようだ。

エタノール輸出で世界最大手のブラジル国営石油、ペトロブラスは今年3月、伊エネルギー大手のENI(伊炭化水素公社)とバイオ燃料の共同プロジェクトをめぐる覚書に調印した。両社はバイオディーゼルやエタノールなど、バイオ燃料の生産技術の開発で協力、バイオ燃料販売の共同事業についても検討する。
ブラジル政府はアフリカでのバイオ燃料生産も視野に入れており、イタリア向けバイオ燃料をアフリカで生産するプロジェクトも話し合われている。

ブラジルのルラ大統領は、3月初旬にブラジルを訪れたブッシュ米大統領との会談で、中米やカリブ諸国などでのエタノール生産拡大や、セルロースをエタノールに加工する技術開発などを柱とする戦略的提携で合意した。
ブラジルにとっても米国との提携は、エタノールを石油と同じように世界市場で取引されるエネルギー商品に育成するうえで大きな意味がある。米国産トウモロコシ原料とブラジル産サトウキビ原料を合わせれば、世界のエタノール生産の7割を占め、国際的な主導権を握れるからだ。

既に金融投機筋によるトウモロコシ商品取引により、トウモロコシの価格が高騰しており、石油取引に依存していた投資家も、トウモロコシに移りつつあるという。また米国の農家も大豆より利潤の高いトウモロコシに生産の機軸を移しており、これが大豆不足を招くという観測から大豆の価格相場も高騰してきている。

Mexico01 米国からの輸入トウモロコシに頼るメキシコでは、この影響でトウモロコシから作る伝統的主食トルティージャが以前の3倍近くまで値上がりした。これにはメキシコ市民の怒りが爆発し、首都メキシコ市で75000人が参加する抗議デモが起きている。
また、中国ではエタノール生産など新エネルギーの導入を積極的に行ってきたが、エタノール原料となるトウモロコシの量が増加するとともに飼料価格が急騰、豚肉価格も上昇し、庶民の家計に大きな打撃を与えている。そのため、中国政府は食糧を原料とするエタノール生産は認可を停止すると発表したが、今後エネルギー需要が急増する中国は新たな対応を迫られることになる。

日本では、大豆で豆腐や納豆のほか、しょうゆやみそなどの調味料も作られている。キッコーマンでは「先物取引などで原料調達を工夫しており、当面は値上げの予定はないが、原料高が今後も続けば、影響が出かねない」と警戒する。また、トウモロコシは乳牛や肉牛に与える飼料にも使われるため、牛乳や牛肉の値上がりにつながる恐れもある。

さらに、今年5月以降果汁100%ジュースが相次いで値上げされた。値上げ幅は1割前後で、1リットルボトルなど大容量タイプが中心だが、500ミリリットルなどの中型サイズも一部製品で値上げの対象となった。値上げの理由は、ブラジルにおける転作だ。バイオエタノール原料として世界的に需要が拡大しているサトウキビの畑をつくるため、オレンジなどの畑がつぶされているという。 大手飲料メーカーの担当者は「オレンジ果汁の価格は、2年前の約3倍に高騰している」と頭を抱えている。

これらの価格上昇の影響は、カップラーメンやカレーなど、思わぬ分野にまで広がりを見せている。

地球温暖化対策のためにという名目の裏で、ポスト石油の新エネルギー資源の優位を狙う暗闘や、投資家および米国の生産農家の利権が見え隠れする一方で、世界中で連鎖的に食料危機が起こりつつある。

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