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財務省の消費税大作戦

Otahiroko01 財務省は、日本が抱える800兆円を超える国債発行残高(国の借金)によって、国家が危機的状況にあると言い、さらに、団塊の世代への年金需給が始まる2011年までに国の財政を健全化し(プライマリーバランスの黒字化)、歳出削減によって国債残高を減らすように方向づけないと、大変なことになる、と訴える。
首相直轄の諮問機関である経済財政諮問会議は、「骨太の方針2006」および「同2007」において、「小泉内閣の構造改革と財政健全化への取り組みを堅持し、経済、財政一体改革を行い、先進国中最悪の水準にある長期債務残高を改善するために早急に財政再建への具体的改革を前進させる必要がある」と財政再建の議論を主導する。

その財務省の本当の目的は「消費税増税」であり、悲願である大型安定財源の確保である。財務省にとって消費税増税は、1994年の細川内閣の「福祉目的税」や1997年の橋本内閣での消費税率アップなどで失敗しているため、今回の大幅増税に向けては長い歳月をかけて環境整備と世論誘導を企てている。

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【 消費税導入までの大蔵省の苦闘史 】

1970年代初頭からヨーロッパ諸国へ導入された「付加価値税」は、当時から日本の政策当事者にも注目されていた。
大蔵省(現財務省)が導入を目指した「一般消費税」の試案は、1978年の政府税制調査会でまとめられ、1979年導入を巡って議論されてきた。しかし、1978年に発足した大平内閣は当初、歳出削減を優先するスタンスを取って、早期導入に消極的な態度を見せた。その後、国際通貨危機、オイルショックによる財政危機を背景に、一般消費税導入の論議が高まり、大平内閣は赤字国債解消を目的とする消費税導入を掲げて選挙に臨んだが、世論・野党のみならず、自民党内からの強い批判も出て大敗する。

大平首相の急死後、政権を引継いで1980年にスタートした鈴木善幸内閣では、完全に緊縮型の財政運営となった。公債の発行減と公共投資の減少のために、新幹線などの大型公共投資は実施を凍結され、またゼロシーリングの予算編成によって、あらゆる歳出が節減の対象になった。実は、これは世間が一般消費税導入に対して、「政府支出に無駄が多いのに増税とは何事か」と強く反発したことを受けて、大蔵省が仕掛けた環境整備の一環であった。
82年には、鈴木首相は「財政事情非常事態」を宣言し、財政破綻によって明日にでも日本が潰れるかのような危機感を国民に与えた。(当時の国債の発行残高はわずか100兆円であり、GDP比はたったの36%であった。今から考えれば、超健全財政であったにもかかわらず・・・。)

1982年に発足した中曽根内閣は「増税なき財政再建」を掲げたが、財源補填のために法人税増税を行うことによって、かえって経済団体に付加価値税に注意を向けさせることに成功した。そのような世論の変化を踏まえ、売上税関連法案の国会提出に至るが、社会、公明、民社、社民連の野党4党が「売上税粉砕等闘争協議会(粉闘協)」を結成し、院外でも労働団体との共闘体制をとったため、これも廃案に追い込まれた。

31987年に発足した竹下内閣は、中曽根内閣の売上税導入失敗を教訓に、高齢化社会に おける福祉財源という新しい名目のもとに消費税導入を目指した。
88年6月末に、自民党税調の「税制抜本改革大綱」を土台にして発表された消費税構想は、基本的には売上税の仕組みと大差あるものではなかったが、自民党の巧みな業界団体への工作と締めつけによって、これらの業界の反対運動は加熱することがなかった。党税調は、2ヶ月間に、のべ338の業界団体から意見聴取をおこない、納税業者の枠を狭めたり、所得の把握がし難くくなるような配慮を凝らしたりするなどして、巧みに業界や中小零細業者の反対論を分断した。また、業界団体への締めつけも強められた。こうした自民党や政府の入念な工作と戦術で、大半の業界団体は非課税措置の優遇を求める条件闘争の立場に立った。流通、中小業者を中心に反対運動はあったが、全体としては売上税闘争の高揚からは程遠いものにとどまった。
一方、野党各党は、88年の臨時国会では共闘体制を組むことができず、一部修正をかちとっただけで消費税導入を許すことになった。労働各団体は、労働戦線統一への思惑もあって、こうした野党間の足並みの乱れに有効な対処ができなかった。連合は、消費税反対、不公平税制の是正という点では一致していたが、金属労協グループのように直間比率の見直しに積極的な姿勢をとり、消費税を歓迎する動きもあった。

こうして、1989年、竹下政権下で、消費税は導入されるが、その不人気は、消費税導入とほぼ時を同じくして政治問題化したリクルート事件とあいまって、同年夏の参院選において、自民党が過半数割れを喫する一因となった。

政府、大蔵省は、10年間を掛けて「日本の財政は危機だ」「財政破綻は近い」という危機感を煽る宣伝を行い、組織的なプロパガンダで財政危機を唱えた。当時の財政は今から見れば超健全であり、全く問題はなかったわけだから、世間のほとんど全部の人々が騙されて、消費税の導入のための世論が作り上げられたことになる。
そこに至るまでには、個人や法人の直接税である所得税が限界まで引き上げられ、大型公共事業が凍結され、最後は、個別に業界団体や労働団体が分断され、消費税反対闘争の盛り上がりが押さえられた。こうした消費税導入までの苦闘は、今、その消費税税率の大幅アップ作戦で活かされようとしている。

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【 消費税増税への財務省の作戦 】

Zaimusho02 1998年の小渕政権の時に発行された巨額の国債の償還が始まる2008年問題、団塊の世代が社会福祉費の支払い対象に入ってくる2010年問題など、日本の財政再建の前には大きな壁がそびえ立っている。財務省は、これらを乗り越えるには消費税の大幅増税しかない、と考えている。
一方、細川連立政権や橋本政権での「段階的な引き上げ」の失敗を踏まえて、一気に大幅引き上げするためにはその下地作り、環境作りがいかに重要かも正しく認識している。そして、その布石は小泉政権の時から着々と打たれてきた。

「改革なくして成長無し」「痛みをともなう改革」は、最終的に財務省が目論む消費税税率の大幅アップへのロードマップとなっている。
財政再建には消費税率の引き上げが不可欠だと承知しながら、小泉元首相は在任中の消費税率引き上げを封印してきた。小泉政権下で行われた定率減税廃止、医療費負担増、住民税改訂、所得控除の縮小または廃止、など次々と打ち出される国民負担増は、いずれ消費税税率アップが議論に乗った時に、政府側が取引材料に使うことが出来る。また、「消費税を上げないと、国民の生活がどんどん厳しいものになって行きますよ」、という脅迫にもなっている。
(そもそも、「国の歳出の4割を占める」と誇張して伝えられる社会保障費も、特別会計を含めた国の連結ベースの歳出に対しては1割に満たないし、その増加率も1%をキープしている。ことさら目を吊り上げて個人負担増を推し進めてきたのは、歳出削減以外の別の目的があると考えられて当然であろう。)

「骨太の方針2005」以降、「財政再建が出来なければ借金が雪だるま式に膨れて、財政破綻を回避できても次の世代が満足な行政サービスを受けられず惨憺たる世の中になる」と財務省は言う。そのような財政再建キャンペーンは、消費税導入時の82年から始まって実に25年間もの間途切れることなくずっと行われてきた。現実に、この間も公債が発行され続けているのだから、借金は増え続けている。しかし、もし「財政事情非常事態宣言」や「財政再建キャンペーン」の唄い文句が正しいのなら、日本の財政はとっくの昔に破綻していなくてはならないはずだ。
そうかと思うと、財政の危機を唱える一方で、「テロ特措法」でのインド洋での有志連合軍の艦船への燃料の無料提供、イラク復興支援経済協力費として1188億円の補正予算(平成16年度)、7000億円超の在日米軍移転費用負担など、財政破綻に瀕している国の支出とは思えない大盤振る舞いが続く。

政府、自民党は民主党が主張する「増税なき財政改革」を荒唐無稽と笑うが、「消費税税率アップあり」で進められている現在の「構造改革」こそ、国民の目を欺こうとする財務省の大作戦であることは、見抜かれている。やはり、財務省官僚と癒着していない政党に政権を取ってもらって、国民の目線で特別会計などこれまで隠されてきた国の財政に切り込んでいかないと、国民の生活が大変なことになってしまう。

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» 消費税率のアップ [江川珈琲店の出来事]
いまの5%の消費税を、11〜17%まで引き上げる必要があると、政府の諮問機関などで議論されているみたいです。 年金などの社会保障を維持するために、どうしても消費税の増税が必要なのだそうです。   自民党内には、1%ずつ消費税を上げて選挙に負けるくらいなら、ドーンと上げても一緒、というような意見もあるみたいです。 選挙に負けるかもしれないけれど、ということは、民意を無視してでもということになるのですから、かなり乱暴な話です。   社会保障の維持イコール、年金問題なんだと思います。 年金については、増税... [続きを読む]

受信: 2007年10月20日 (土) 22時27分

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