« 文明の黙示録(25) | トップページ | 文明の黙示録(27) »

文明の黙示録(26)

Photo_2

                   第二章 資本の野望 (15)

                   【 2001年 ニューヨーク 】

Bush021 2001年1月に誕生したブッシュ政権は、早速アメリカの軍事・外交路線を大幅修正した。
対中国外交では、江沢民総主席と朱鎔基首相が期待した安定的な対中米関係に冷や水を浴びせる形で、人権政策に関して中国のさらなる改善を要求し、中国敵視政策に転じた。軍産複合体の要請する軍備拡大については、軍事関連予算を大幅に増加させるとともに、日本などに周辺国の脅威を理由にミサイル防衛(MD)構想を押し付け、巨額の予算を付けさせた。また、1972年に旧ソ連と結んでいたABM条約(迎撃ミサイル制限条約)を破棄する一方、環境問題のために世界の多数の国が参加した京都議定書からも離脱して、一旦合意されていたCO2削減義務を放棄するなど、「ユテラリズム(一方的外交)」と呼ばれる外交姿勢を鮮明にした。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

イスラエルでは2001年2月、首相公選が実施され、リクード党が圧勝し、シャロン党首が首相に就任した。シャロン政権は治安維持を最優先課題に掲げ、統一エルサレムをイスラエルの首都であると主張したため、イスラエルとパレスチナ間の衝突が激化した。
シャロン首相の経歴を見れば、イスラエルが中東和平のプロセスを望みもせず、実行するつもりもないことは明らかだった。シャロンは1979年のエジプトとの平和条約に反対票を投じ、1985年には南レバノンからの撤退についても反対票を投じている。1991年にはマドリードの平和会議へのイスラエルの参加に反対し、1993年のオスロ合意に関する国会の全会投票に反対し、1994年行われたヨルダンとの平和条約の投票では棄権している。1997年のヘブロン合意にも反対票を投じたうえに、2000年にはイスラエルのレバノンからの撤退を批判し、首相就任後は国際法に完全に抵触した形で、占領したアラブ領地にユダヤ人入植地の建設を急速に進めている。
リクード党はもともとヨルダン川から地中海まですべてをイスラエルの領土とする大イスラエル主義を掲げており、ユダヤ人入植によって占領地のユダヤ人人口を増加させ、既成事実を積み重ねて占領地返還を困難にする狙いが明白であった。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

2001年2月、ニューズウィーク誌は「グローバル化するテロ-独占取材:ビンラディンの国際的ネットワーク」という大見出しとともに、アラブ式のスカーフで顔を隠し、右手にライフル銃を持った男の写真が掲載された。読者はこの武装した恐ろしい人物がオサマ・ビンラディンの「グローバル・テロ」ネットワークの一員だと考えたが、この写真はヨルダン川西岸地区で行われた葬式の現場で撮影されたもので、この人物はビンラディンとはまったく関係のない、パレスチナ人タンジム民兵の武装メンバーだった。

ブッシュ政権誕生からわずかの間に、世界にきな臭い雰囲気が広がっていった。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

Bush_chaney012001年6月23日付のワシントン・ポスト紙は、チェイニー副大統領が前年8月まで会長を務めていた大手石油採掘会社ハリバートン(テキサス州ダラス)が、国連制裁下のイラクに7300万ドル相当の石油採掘施設を建設・供与する契約に関わっていた、と報じた。同紙は、石油業界幹部や国連の機密文書に基づく情報として、1998年からイラク政府と結んだ石油採掘施設や排出ポンプの売却契約にハリバートン社が直接関わっていたとし、湾岸戦争で多国籍軍が破壊したイラクの石油採掘施設の修復契約についてもイラク政府と合意寸前だったが、クリントン前政権が「国策に反する」としてこれを阻止した、と伝えた。
国連制裁はイラクとの商取引そのものを禁じてはおらず、契約そのものが違法行為とは言えないが、ブッシュ政権はイラクが国連制裁下にあるにもかかわらず、ロシアや中国が原油取引を拡大していることで制裁が骨抜きになっている、と批判していた。
お膝元のアメリカの、しかも副大統領が責任者だった企業が、アメリカとイラクの敵対の舞台裏で微妙な関係を維持していることは、ブッシュ政権の馬脚を現すスキャンダルと見られたが、この問題は9月11日に起きた大事件によって忘れ去られた。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

アフガニスタンで政権を掌握したタリバンは、極端なイスラム原理主義による人権問題や、バーミヤンの石仏破壊行為などのために、国際社会から承認を受けられずに孤立していた。フランスの公共テレビ局、FRANCE3が「断片からの確信」(2001年10月放映)という番組のなかで明らかにしたところによると、2001年7月に、ある秘密裏の会合がドイツのベルリンで数度開催されていた。その会合に参加していたのは、アメリカ、ロシア、パキスタン、ドイツの高官で、アフガニスタン内戦を終わらせ、タリバン政権の国際的孤立に終止符を打つ和解案を練っていた。
アメリカ側はそこで、アフガニスタン国内に巨大な石油パイプラインを敷設するかわりに、数十億ドルもの土地使用料を支払うという提案を行っていたが、タリバン側は結局最後までその会合に参加することを拒否し続けた。

アメリカ政府は、アフガニスタンに匿われているオサマ・ビンラディンの反米姿勢がタリバンに影響を与えている、と確信した。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

911wtc01 2001年9月11日、衝撃的な映像が世界中に配信された。ニューヨーク・マンハッタンの世界貿易センターの超高層ツインタワー北棟に、ボストン発ロサンゼルス行きのアメリカン航空11便が突入、爆発炎上した。黒煙を上げる超高層ビルの映像に人々が息を呑む中、約20分後に、今度はユナイテッド航空175便が、世界貿易センタービルのツインタワー南棟に突入し爆発炎上した。この時、人々はこれが飛行機事故ではなく、何かとんでもない事件が発生した、と確信した。

追い討ちをかけるように続報が届いた。
ワシントン・ダレス国際空港発ロサンゼルス行きアメリカン航空77便が、やはり同時刻にハイジャックされ、午前9時38分にアメリカ国防総省本庁舎(ペンタゴン)に激突し爆発炎上した。激突の瞬間の映像がペンタゴンの駐車場の監視カメラによって記録され、また、付近を通行中の多くのドライバーや歩行者によって激突の瞬間が目撃された。

ニューヨーク・ニューアーク空港発サンフランシスコ行きユナイテッド航空93便からは、午前9時57分、機内電話や携帯電話によって同便がハイジャックされ、ワシントンへ進路を変更したとの通報があった。それまでに3機がそれぞれ自爆突入を行っていたため、アメリカ合衆国議会議事堂、あるいはホワイトハウスを狙っていると考えられた。
その後、同機は午前10時3分、ペンシルバニア州シャンクスヴィル(ワシントンD.C.北西240kmの場所)に、墜落した。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

911ny01「アメリカ同時多発テロ事件」と呼ばれることになるこの事件の犠牲者は、ハイジャックさ れた4機の旅客機の乗員・乗客、アメリカ国防省および世界貿易センタービルの犠牲者、ニューヨーク市消防局の消防士、ニューヨーク市警察の警察官、ニューヨーク港湾管理委員会の職員など、すべての死者を合計すると2,973人に上った。
世界貿易センタービルの両タワーは、旅客機突入後、崩落して完全に瓦解した。マンハッタン島にもうもうと吹き上がる噴煙に、人々は底知れぬ恐怖を覚えた。

FBIの捜査の結果から、アメリカ政府はこのテロ攻撃がオサマ・ビンラディンをリーダーとするテロ組織アルカイダによって計画・実行されたものと断定した。アメリカ当局が「オサマ・ビンラディン」の名前を公表したのは、テロ発生からわずか2日後のことだった。
事件直前、50%を切っていたブッシュ大統領の国民の支持率は、事件直後には9割に到達、歴史的な国民の支持を得た大統領となった。

第三章(1) 【2002年 バンジシール】 につづく。

Banner_01

←宜しければ、応援クリックお願いします。

人気blogランキングへ

|

« 文明の黙示録(25) | トップページ | 文明の黙示録(27) »

「経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/135811/8990980

この記事へのトラックバック一覧です: 文明の黙示録(26):

« 文明の黙示録(25) | トップページ | 文明の黙示録(27) »